【LPAの会コラム】遺族年金は非課税です!
2024.03.12
年金には老齢・遺族・障害の3種類があります。そのなかで夫の死亡後に妻の大切な収入となる場合がある遺族年金について正しく理解しておきましょう。遺産分割協議書に書くべきことは?
受け取れる人は?
遺族年金は2種類に分けられます。遺族基礎年金と遺族厚生年金です。
種類 | もらえる人 |
遺族基礎年金 | 亡くなった方(国民年金被保険者)に生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」 |
遺族厚生年金 | 亡くなった方(厚生年金被保険者)に生計を維持されていた「配偶者」、「子」、「父母」、「孫」または「祖父母」 |
「子」とは18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害等級1級または2級の障害の状態にある方をさします。
配偶者は内縁、事実婚でもかまいません。
自営・フリーランスに遺族厚生年金はありません
気をつけたいのは遺族厚生年金を受け取れるのは厚生年金被保険者に生計を維持されていた遺族(=会社員、公務員の遺族)に限られることです。自営、フリーランスの遺族には支給されません。もちろん厚生年金に加入歴があるときは要件を満たしてしていれば支給されます。自営、フリーランスなど国民年金の方は会社員、公務員に比べると保障は薄いので注意が必要です。
受けとる人には優先順位がある
遺族厚生年金は「子」のある方が優先されます。遺族基礎年金は「子」がいなければ支給されません。遺族厚生年金受け取りの優先順位は以下の通りです。
遺族年金は、請求をすれば亡くなられた月の翌月分から受け取ることができます。 年金額は、遺族基礎年金と遺族厚生年金で異なります。遺族基礎年金と遺族厚生年金のどちらの要件も該当する場合は、あわせて受け取ることができます。
年金額はいくら?
遺族基礎年金
子どもがいる場合に受け取れる金額(令和5年度)は以下の通りです。
795,000円/年+子の加算額
・一人目、二人目の加算額 228,700円/年
・三人目以降の加算額 76,200円/年
※昭和31年4月1日以前に生まれた方は…年額792,600円+子の加算額
遺族厚生年金
ここでは平成19年4月1以降に65歳になった妻(配偶者)でいくらもらえるか考えます。
1,夫がかつて会社員で妻が専業主婦の場合
夫の老齢厚生年金の3/4+妻の老齢基礎年金
死亡した夫の老齢厚生年金の4分の3の額となります。
(例)夫18万円/月(うち老齢厚生年金12万円)
妻 6万円/月(老齢基礎年金のみ)
12万円×3/4=9万円 遺族厚生年金は9万円/月
9万円+6万円=15万円/月
2,.夫、妻とも厚生年金加入者の場合
①「死亡した夫の老齢厚生年金の4分の3の額」と、②「死亡した夫の老齢厚生年金の2分の1の額と妻の老齢厚生年金の額の2分の1の額を合算した額」を比較し、高い方の額が遺族厚生年金の額となります。
(例)夫18万円/月(うち老齢厚生年金12万円)
妻16万円/月(うち老齢厚生年金10万円)
①「死亡した夫の老齢厚生年金の4分の3の額」
12万円×3/4=9万円
②「死亡した夫の老齢厚生年金の2分の1の額と妻の老齢厚生年金の額の2分の1の額を合算した額」
12万円×1/2+10万円×1/2=11万円
⇒この場合の遺族厚生年金は、11万円。
①9万円<②11万円
※平成19年4月1日前に遺族厚生年金を受け取る権利があり、かつ、平成19年4月1日時点ですでに65歳以上の方(昭和17年4月1日以前の生まれの方) は、次の①から③のうち、いずれかの組み合わせを選択することになります。
ただし、③は、遺族厚生年金の受給権者が死亡した方の配偶者である場合に限ります。
非課税になると保険料も安い
遺族年金は非課税なので所得税がかかりません。そのため国民健康保険料、後期高齢者医療保険料も低額になります。世帯全員が住民税非課税ですと(夫死亡後、妻のみの世帯等)、課税年金収入+合計所得金額が80万円以下のとき介護保険料は最低額になります。自分の老齢年金も158万円以下(65歳以上年金収入のみ)ならば所得税はかかりません。
※介護保険料の算定式、保険料は、市町村によって異なりますので、お住いの市町村にお問い合わせください。
妻自身の老齢厚生年金額が遺族厚生年金額より高ければ遺族厚生年金は支給されず、自身の老齢基礎年金、老齢厚生年金が支給されます。結果、課税収入となり社会保険料も高くなります。
遺族年金は老後の大きな支えの一つです。同じ年金収入だったとしても遺族年金ならば非課税なので、所得税も住民税も発生せず結果的に社会保険料も安くなります。
自身の年金額とともに遺族年金についても調べておきましょう。